毎日原稿用紙1枚分

毎日400字以内の意見表明

生まれてこない子どもたち

 子どもが足りない。まったく足りていない。少子化問題は日に日に注目を集め、様々な角度から熱心に論じられている。

 若者の未婚率の高さを嘆く声も多い。貧困化だとか社交力の低下が主犯として糾弾されているが、独身者が社会的に放置されていたり、交際や結婚に高い経済力や社交性が求められている時点で、そうした問題は論じるまでもない当然の帰結だ。

そもそも、少子化は解決できるのだろうか。その前提に疑問が呈されることはほとんどない。楽観は結構だが、どうして無根拠に解決可能と信じ切れるのだろうか。世界のどこを見回しても、少子化を完全に解決した例など存在しないのに。

 かつて子どもは当然のように生まれた。社会がすべての男女にそれを期待し、また事実上強制した結果だ。選択の余地がなかったとも言える。だが、選択の自由は種の淘汰圧として作用し、少子化を加速させた。自由な空気は、人類にとって致死性の毒ガスなのかもしれない。